※中等部設定

いつからだろう。あちこち駆け回るツインテールを目で追う ようになったのは。きゃんきゃん五月蝿くて仕方が無かった はずの声を無意識に拾うようになっていたのは。
もう随分昔のことのような気がする。

「なーつめ?」
どうしたん、ぼんやりして?

ひょいと顔を覗き込んでくる蜜柑は、初等部のころに 比べるとすっかり大人びた。元々顔の造形自体は悪くなか ったので、最近では男子生徒の中で密かに人気をあげている。 らしい。棗としては当然気に食わないのだった。口には決して出さないが。

「寝不足?」
「ばーか、違ぇよ」

お決まりのツインテールを引っ張ってやろうとしたところでいつもとの違いに気づく。

「あれ、お前…」
「ふふん、もう中等部やしな。”ツインテールはガキっぽい”って 蛍に言われたし、今日からは髪おろすことにした」

得意げな様子は相変わらず子供っぽい。大人びてきた外見と 不釣合いで、だけどそれが蜜柑らしいと棗は思った。

「それに、」

くるりと蜜柑が背を向けた。

「あんたは覚えてるかわからへんけど―――こっちの方がええ って、昔、言ってくれたことあったから、だから…」

甦る記憶。それはいつだったか―――自分が言った台詞。

「でも別に深い意味はなくて!やっぱり人に褒めてもらった髪 型の方がええやん?ほらあんた思ってへんことは言わなさそう やし…。まぁ、何年も前のことやから今とは違うやろうけど…あんたは覚えてへんかもしれへんけど…」

最後の方はほとんど小声だった。耳がほんのり赤くなっているのが後姿からでもわかる。その姿が可愛い、なんて、あの頃なら素直に思うことすらままならなかったけれど、今なら思える。

「いや、覚えてる。…やっぱりそっちの方が似合ってるな」

後ろから髪を掬い上げて、ひとつキスを送る。さて、どんな顔をしてこちらを振り向くのか。



Step you






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