アリスを持つ生徒たちは、連帯感がそれなりに強い。一見、能力別クラスごとに隔たりがあるようで、それでも各々が特別な能力を持ち、同じような境遇、同じような環境で同じ季節を過ごしてきたことで、奇妙な同一感を共有している。
何でもないような顔の下に隠した、他とは一線を引いた異質・端であるゆえの苦しみや痛み、悲しみ。アリス所有者のそれは、またアリス所有者にしか理解しえない。
だから善くも悪くも、この先もいわばそんな馴れ合いが続いていくものだと思っていた、けど。
どうしてだろう、いつからか―――大人に近づけば近づくほど、己と他人のあいだに絶対的な差異が生まれつつあることに気付かされる。土壌は同じでも、種が違えば、芽吹く葉はまだしも、咲かせる花になるとまるで違う。そういうことだ。つまりあたし達はあくまでも別の人間であり、この先きっとどこまでも独りなのだ。
不変を信じていたあらゆるものが、差異に従ってそれぞれ枝分かれし、分離していく。
当たり前のことなのに、それが柄にもなく、寂しいなんて思うのだ。群れの中で、胸が焼け付くような孤独を感じることが、あるのだ。
自分はこんなに不甲斐なかったんだろうか。

「・・・美咲?」

固く閉じていた瞼を開けると、どうした?と見下ろしてくる双眸があった。

「悪い、なんでも、ないから」

少し息が弾んで、言葉が途切れ途切れになる。

「ほんとに大丈夫、かよ?」
「・・・大丈夫だから、」

続けてよ、はやく。言葉にするかわりにその口を塞いだ。

ひとつだけあった。ほんのひと時だけ、あの焼け付くような孤独を感じなくていい、その方法が。だけどこれもやはりほんのひと時なのだ。
 翼がため息をこぼすように笑った。いやに大人びた表情に、どきりとするのと同じくらいにぞっとする。
ああ、そのうちにこいつもどんどん、あたしから離れていくのだろう。
そう思うと無性にやり切れなくなって、がむしゃらにその首にしがみついた。
こんな痛みを伴ってまで、他人と一緒になろうとするなんてきっとあたしはどうかしてる。