(どうして神様は、わたしを選んだのだろう)








「ごめんね、私・・・ほんとにドジな神子だね」

こんなの、本当に世界再生なんて出来るのかな。

生まれてはじめてちょっとだけ、泣きごとを言った。
だけどそれは思わず口をついて出た言葉だったから自分でもひどく驚いた。 言うつもりはなかった。たとえほんのそれだけの泣きごとでも本当は、この世界でただひとり、わたしだけは言っちゃいけなかったんだ。





Crazy for you***






「あ・・・ごめんねロイド、今のは聞かなかったことにして?」

どうして、と強い眼差しでこちらを見据えるロイドに、力なく笑うことしか出来なかった。
だってわたしはコレットという一人の人間であるよりも前に、神子なのだった。 人々は、"神子さま"とわたしを尊崇する。人々にとって神子という存在は救いを乞うべき対象であって、それ以上でもそれ以下でもなかった。 わたしは世界を再生することでしかその価値を見出しては貰えないのだ。その為にも世界中の期待に応えなければならない。だから。

「わたしは弱音なんて、言っちゃ駄目なんだよ。・・・いつでも強くあらないと世界中が不安になっちゃうから」

自分の発する一言一言すらも、世界を天秤に掛けているという事実。
背負うにはあまりに重く、でもそれは神託を受けたときから避けられなかった、ひとつの使命なのだった。

「―――あのさ俺、そんなに頼りねえかな」
「・・・え?」

突然ぎゅう、と抱きすくめられたけれどそれに驚く暇もなく、ロイドは言葉を続けた。

「俺は神子じゃないから、その立場とかよくわかんねえからこんなこと言うのかもしれないけど―――お前が、苦しいこと何も打ち明けられないほど、俺は頼りねえのかな」

・・・そんなこと、ない。
ふるふると首を振って、その胸に顔を埋めた。
ロイドは、ロイドだけは。神子としてじゃないわたしを受け入れてくれる唯一の。
隔ての無い口調で態度で、わたしと対等に接してくれる唯一の。

「だってロイドといるときだけは普通の女の子として、いられるような気がするの」

それは幸せなこと。もしかしたら過去に生きてきた神子には、彼みたいなひとが傍にいなかったかもしれない。いたかもしれないけど、でもいなかったかもしれない。

―――だからロイドといるときだけは自分が神子であることを忘れてしまいそうになって、こうして背中に回された腕の温もりに、本当は全部吐き出したくなる。神子であることの不安とか恐怖とか苦しみとか、ロイドは受け止めてくれる気がして、どうしようもなく吐き出したくなる。
でもそれは許されないことだ、と何度も自分に言い聞かせて、でも言ってしまいたくて。
そう、わたしがロイドになにも打ち明けられないのはロイドが頼りないからじゃなくて、わたしが、

「コレット」

不意に名前を呼ばれた。「神子様」じゃなくて。この世界で数少ない、わたしの本当の名前を呼んでくれる声。 それは、いつもより少しだけ大人びて聞こえて、心臓がどきん、と大きく鼓動を打った。

「泣きそうな顔、してるぞ」

泣いてないもん、と顔を上げれば不器用に、でも優しく口を塞がれて。

ああほら、これでわたしはもうなにも言えなくなるから、



(THE ONLY WAY TO REDEEM ME FROM DARKNESS.)






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リクエストは、甘々ロイコレ!ってことでしたがどうなんでしょうこれは。結構シリアス風味になってしまってすみません・・・ 私的ロイコレイメージは純粋って感じなので多少そういうのを意識したんですが
兎にも角にも、リクエスト有難うございました!リクされた方のみこの作品、お好きにどうぞ!

2006,July 23





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