「ロイドの、ばか!」



ばかばかばか!と柄にも無く張り上げたコレットの声は、ロイドの耳を突き刺すように響いたようだった。 目を細め、その残響に堪えている様子がうかがえる。だけどそれも一瞬。目に涙を浮かべたままくるりと背を向けて駆け出したコレットに、先刻の彼女以上の大声で、必死に呼び止めようとロイドはその名を叫んだ。



「コレット!待っ・・・」



言い終える前に、彼女の後ろ姿はみるみる遠くなっていき、人混みに紛れてしまった。
咄嗟に伸ばしていた右手を力無く下ろして、ロイドは仕方なく溜息をつく。通り過ぎる人々の、好奇の視線が痛いほどに突き刺さる。

あんなにコレットを怒らせるなんて、いつ以来だろうか。
滅多なことで怒りを露にしない彼女のことだ、余程なにか気に触れることをしてしまったに違いない。或いは、蓄積されてきた感情がどかん、と爆発したようにも見えた。
―――大体自分は彼女の優しさに甘えすぎなのだ。無償で与えられるそれを良いことに、どれだけ彼女を傷つけてきたかしれない。にこり、と笑って「いいんだよ」と言ってくれることを当然のように思っていた、わけで。だけどそれは信頼とか信愛とかも越えて、最早自惚れでしかなかった。あんな華奢な身体に山ほどの重い枷を背負わせている事に、気付いていたのに。それなのに。我ながらなんて情けない。

なんて、情けない。






乱反射するこころ








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み、短い・・・本当は拍手小話にするつもりでした。
ふたりだって喧嘩ぐらい・・・うん、しないかな(書いといてそれかァァ)喧嘩の理由は曖昧にしておきました。うまく描写出来そうになかった・・・

2006,july 16





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