交錯する想いは、

      今宵のの下に      




水面に映った人影はふたつだった。そしてその場はまさに静寂であり、耳を澄ませばようやく僅かな虫の音だけが響く。 薄ぼんやりと辺りを照らしているのは大きな月と、その光を反射して青白く煌めいている水面。 さわさわと頬を撫でていく風は、此処が水辺の所為か少し湿っぽい。

「・・・空、見てごらんよ、ロイド」
「何だ?しいな」
「今夜は満月だよ、すごく綺麗」
「・・・ああ、本当だな」

ぴん、と張られていた静寂の糸が震えたのを感じて彼は目を開けた。
寝惚け眼を擦り、一番最初にその瞳に映ったのは水辺に佇むふたりの姿だった。 彼は、深い眠りに落ちている他の仲間達を起こさないようにそっと立ち上がると、大儀そうに紅い髪を掻き揚げながら、ふたりの直ぐ傍の大木にもたれ掛かった。 そうしてそのままずるりと座り込んだ。 気配を消さずとも、幻想的な世界に飲み込まれたこのふたりは、背後に忍ぶ誰かの気配になど全く気付きもしない。
(こんな時間に一体、何してんだか)
しかし直ぐに、自分こそ覗きだなんて悪趣味じゃないかと自嘲する。でも再び眠りにつく気はもうなかった。というより眠れそうになかった。 ふたりが寄り添い合うところなど見たくもなかったが、それ以上に彼らが自分の知らないところで知らない話をして そうして知らない関係になっていくことが、どうしようもなく恐ろしいのだ。 それでも、たとえそうなったとしても壊しにかかる勇気など最初から持ち合わせてはいないけれど。 きっと何時もの如くへらりと笑ってみせるのだろう。臆病だというのは自分自身が一番よく理解している。
(はぐらかして、逃げて、いつも肝心な事を何ひとつ言えやしないんだ)
(今だって、あいつらの所へ行く勇気なんてさらさらない)

ちっ、と小さく舌打ちをする。誰に対してでもない、この不甲斐ない自分自身にだ。

「もう寝なよ、ロイド。昨日も見張りしてただろ?今日はあたしが代わるからさ」

労わるような優しい声。はにかんだ笑顔は、月明りの所為か大人びて見えた。 その全ては今、彼だけに与えられたものだ。それは全く自分の知らない彼女。彼だけに見せる姿。 自分のものになったことなどかつて一度も無いし、多分この先も無いのだろう。
(ちくしょうちくしょうちくしょう)















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ちょ、ゼロス不憫かもしれない というか彼のキャラがつかめない
ゼロス→しいな→ロイドのつもりです。ロイしい←ゼロスではないんです決して 

2006,March 10




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