重い瞼をひらく。 昨晩カーテンを閉めないでいた所為で見えた、窓の向こうの世界はまっしろだった。そういえばここのところ雪が降り積もっていたんだっけな、と覚醒しない頭の中でぼんやりと考える。おかげで頬を刺すような冷たい空気が流れていたけれど、毛布に包まっただけの身体に寒さを感じないのは、隣にひとの体温があるからだ、ということくらい直ぐにわかった。だって一昨日もそうだったし、その前の日もそうだったから。 ベッドから出ようと、背中に回された腕をそっと動かそうとして、ぴくりと反応した彼の様子にこれじゃあ起こしてしまいそうだ、と躊躇する。しかしそれも束の間で、外そうとしていた、背中に回っていた腕の力がぎゅ、と強くなった。 ステ ラ 声がした。声帯から搾り出したような嗄れた彼の声がした。だれかの名。 わたしではないだれか。わたしはその「だれか」の名を知っている。 ・・・あのひとだ。命を以ってして彼を護った、あのひと。 たとえ今此処にこうして存在しているのがわたしだとしても、彼のこころはいつだって、あのひとを抱いているから。本当に彼の腕の中にいるのはわたしではない。わたしではないのだ。 行く なステラ ああきっとわたしも彼も気付いているのに。 ひとというのはどうしてこんなにも脆いのだろうか。 わたしがいくら剣を振るっても、彼がいくら拳を振るっても、その強さは所謂偽りのものだ。本当の強さではない。わたしも彼もひどく弱い。 彼がわたしにあのひとの存在を求めているのも、わたしがそれを撥ねつけられずに、何処かで浅はかな希望を抱いているのも、すべて。 わたしたちがあまりに弱いからだ。 「クーリッジ・・・」 未だ眠る彼の名前を呟いて、下唇を思いきり噛み締めた。 わたしはステラさんじゃないんだ。ステラさんにはなれないんだ。ステラさんを越えるなんてこと、到底出来ないんだ。そのくらい、お前だってわかってるだろう? (だけどもう、なにもなかったころには戻れないよ) |
*************************** ・・・ウワアア重い しかも救いなくてすみません、次セネクロ書く機会があれば明るいものを! 2006,November 12 |
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