「そう、それででなんだけど、」

改まったような態度を示したのはルークだった。

しかしそんな態度とは裏腹に、全く情けない実には、両手が小刻みに震えていて。 此処にアニスでもいれば、
「ほーんと、あんたってば相変わらずヘタレの極みだよ ね」
などといって一瞥されたに違いない。もっとも、誰かに言われなくともそん なことはもう既に自覚済みなので弁明のしようもないが。
ルークはやや自嘲気味にふっと笑ってみせたかと思うと、直ぐに神妙な顔つきで ティアを見据えた。両手をぐっと握り締める。

「―――俺、お前にずっと言いたかったことがあるんだけど。それでも聞いてく れる、かな?」

ずっと言いたかったこと・だなんてお決まりの台詞。つまるところそういうことなのだった。
彼女は―――ティアは、薄い紅を引いた唇をやわらかく緩ませて、「ええ」と首を縦に振った。 プラチナブロンドの髪が流れるように揺れる。 それを確認すると、ルークはひとつ大きな深呼吸をした。それでも早鐘のようなテンポを刻む 鼓動を落ち着かせるにはあまり意味を成しはしなかったけれど。

そもそも、これから口にしようとしている言葉は、伝えてはいけない・とあの夜 に飲み込んだ。―――筈の言葉だった。二度と伝えるつもりはなかったし、こう して伝えることが出来る日が来るなんて思ってもいなかった。というか思える筈が無かった。
だけど今となっては、あいつのためにも俺には俺の未来を掴む権利があるわけで 。いや、義務といった方が正しいのかもしれない。俺が俺の選択した道を歩むことは 、己の中に確かに存在する、かつてのあいつのためにできる贖罪のひとつである と思っている。
そのために踏み出すべき、一歩でもあるのだ。

「ルーク?」

伝えたいことがあると言ったのは自分の方だというのに、押し黙ったままであること を彼女も疑問に思ったのだろう。どうしたのぼんやりしちゃって、と、首を傾げて覗き 込まれる。慌てた反面、こうしたティアの所作は旅をしていた時分にもよくあったように記 憶していて、不意にどっと懐かしさがこみ上げてきた。
例えば。あのころの眠れずにいた夜には、決まって彼女が今と同じようにこちらの顔を覗き込んで、優しい声で「どうしたの?」と。だけどそれ以上は何も言わずにただ傍にいてくれて。怖ろしくて不安で仕方が無くてひとりきりで居ることがどうしようもなく心許無かったから。彼女が隣にいてくれれば少しだけ、畏れを拭えるような気がしていた。共有できるような気がしていた。
―――もっとも今はもう、蝕んでくるような死の恐怖に怯える必要はないのだ、けれども。

「ルークってば、今度はどうして笑ってるのよ」
「いや、…変わらないんだなって思ってさ」
「私が?そうかしら?これでも多少背も伸びたりして、」
「違う違う、そういう話じゃなくてさ、―――――いや、そうかもな。うん。変わったところもある、かな」
「…なによ、それ」
「ほらえっとその……あれだよ、お前、綺麗になったなあとかって、思うし、さ」

そっぽを向いて、それでいて小さな声だったが、ティアの耳にはちゃんと届いていた。 途端に彼女は大きく目を見開いたが、ルークの言葉を咀嚼するとくるりと後ろを向いた。赤く染まった顔がわずかにちらりと覗く。




「ばか…」

聞こえないくらいの声でようやっと聞こえた、何度言われたたかしれない台詞。またひとつ変わらない彼女をみつけたことにルークはどこか安堵した。本当に綺麗になって、大人びて、だけど変わらないものだって確かにあるのだ。彼女も、そして多分自分だって。こうして変わらない想いを持っている。
お陰でいく分緊張が和らいで、そのまま。自然と、滑るように言葉がこぼれた。

「―――俺が言いたかったことってのは、な」
「…なによ」

少しつん、とした言い方が本当は照れ隠しのためだってことも解っている。後ろを向いて隠してるつもりかもしれないけれど、だって髪の隙間から覗く彼女の耳は未だ紅潮したままだ。その姿にルークは思わず笑みを漏らして、それから。果たさなければならない義務を。俺は俺の気持ちを、ちゃんと。

「ティアのことが好きなんだ」





         RE:START




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わたしもティアに「ばか…」って言われ隊!!!!!!(ほんとにばかだな)
リクエストはED後・最後の赤毛はルークだと仮定して、告白の返事ということで した。返事というかルークが告白しちゃってますすいません…。不都合があればなんなりとどうぞ! 紛らわしいかもしれませんが、人格や意識はルークのつもりです。が、アッシュ の存在はやはり蔑ろにはできないのでした。リクされた方のみご自由にどうぞです! ありがとうございましたー!

(20070324)
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