後、一握りの勇気




携帯のディスプレイとにらめっこを始めて小一時間。
神楽の頭の中では頼れる姉貴分こと、妙の言葉がぐるぐると回っていた。 必死の思いで持ちかけた相談に彼女は哂うことも驚くこともなかったが、ただ一言、微笑んでこう言ったのだった。

「神楽ちゃん、言わなきゃ何も始まらないのよ」






……といってもだ。直接告げるなんてもっての外で、とんでもない拷問に等しい。というか面と向かって告げてみたところで、「何それ新手の嫌がらせ?キモ」とか言ってアイツはまともに取り合いもしない気がする。会話を成立させなければならないという点では電話だって同じ。
そんなわけで、 「メールならいいんじゃないかしら?」そう助言をくれたのも妙だった。

…のだが。

「だーもう!腹立つアル!」

なにがってもちろん決して妙にではない。意気地の無い自分自身にだった。

こんなもの、"3"を三度押して"2"を二度押して送信ボタン押したら 終いだろーが!そうじゃん簡単なことじゃん!

・・・と思っているのは事実なんだけど。思ってても実際指が動いてくれないんだからどうしようもない。
よし、と意を決してすこし震える手でキーを打つのだけれど、 どうしても"2"を一度押したところで指が止まる。
(やっぱ無理!無理ヨこんなん!)
ああどうしよう、と頭を抱える。自分がもっと素直だったら良かったのに、とか、相手があんな奴じゃなかったらあるいは、なんて思ったりしないこともないけど。だけど仕方がない。
(だって好きなもんは好きなのヨ)
―――と。改めて心の中で言葉にしてみると、恥ずかしいにも程がある。そして自分は今からそのこっぱずかしい言葉を送ろうとしているわけで。
(・・・・・ありえない)
大体こんなの自分の柄じゃないとかそういうレベルじゃない。嫌がらせ?とかキモイとか言われたって当然だと最早笑えてくる。
(うー、ごめんアル姉御)
全く申し訳が立たないけど、今日のところはとりあえず!!

「・・・ハイ送信」

作成途中のままのメールを送信して勢いよく携帯をベッドの上に放り投げると、自分もそのままダイブして布団の中に火照った顔を埋めた。





◇ ◆ ◇




「おい総悟、携帯鳴ってんぞ。メールだ」
「えー?今ちょっと俺のマリオやられそうなんでさァ、誰からですかィ?」
「…チャイナって出てんぞ」
「チャイナ?…って人の携帯勝手に見てんじゃねーよ土方コノヤロー」
「てめっ、見ろっつったの誰だ!つーかこないだ俺の携帯から出会い系書き込みまくったくせによくも抜け抜けと、」
「知りやせんよそんなん奴ァ。あっヤベッやられる」
「…お前ホンット覚えてろよ」
「で?もう良いんで何て書いてありやすか?」
「あー……"すか"?何だコレ"すか"って?意味わかんねー」
「何だ、まーたそれかァ。なんかここ二日間くらい連続で送られてきてんでさァ」






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なにこの乙女な神楽ちゃん!世間では沖→神が圧倒的ですけど3Zだと神→沖もアリだと思うんですよどう思いますか!(誰に聞いてんの)

(20070403)


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