(※学パロです!パラレル等苦手な方はご注意を!)












見慣れた校舎に一ヶ月あまりの別れを告げて校門を出る。今日は終業式だった。全校生徒が揃って下校するため、蝉の声がカルテットを奏でている並木道は、学生達でごった返している。
アレンとリナリーはその群れの中にすっかり溶け込んで、並んで歩いていた。二人で揃って下校するのは珍しいことではない。ただ、その間柄は、彼らと同年代の他の男女が一緒に帰っているその間柄のようなはっきりと明瞭に甘いものではなかった。お互いに言葉にしていないし、するつもりもなかった。それぐらいの関係が心地良いものなのだ、と思っていたからだ。



「もう明日から夏休みですね!」

心なしか普段よりえらく浮かれたアレンの声が、抑えきれず弾けとんだ。そうね!と隣で頷いたのはリナリーで、彼女も存外似たような様子だった。きゃっきゃと笑いながら、休みの予定をどうしようかと話しはじめる。
そう、明日からようやく長い夏休みが始まるのだった。つまり朝早くに起きる必要もなくなるし、好きなものを好きなだけ食べていられる時間もあるし、大っ嫌いな某パッツン男児の顔も見なくて済む。なんて、いいことづくめなんだろう!アレンは心の中でほくそえんだ。式中ずっと長々しい校長の話をうだうだ聞かされた苛立ちだって、そんな開放感の前に今じゃすっかりどうでもよくなっていた。

「休み、一月しかないのが残念ですけどね」
「そうねえ。九月も休みが良かったかな、なんて。暑いから」
「あはは、暑いのヤですよね。今日だって相当暑いけど」
「ええ、日差しが強くて参りそう」

リナリーはそう言って手を翳し、眩しそうに太陽の方を見つめた。確かに今日は日の照り付けが強くて、アスファルトの向こうに陽炎が揺らめいている。日にすっかり当てられた彼女の白い肌など、桜色に火照っていて。けれどそれすらも夏の香を予兆されるものだった。
ところで、夏休みの入口というのは魔法がかけられているようなものだ。アレンはそう思っていた。学校生活というある種の拘束から解き放たれる魔法。穏やかでゆるやかで、溺れそうになるほどの時間の流れの中に身を放り込まれ、なにか特別な出来事が起きるかもしれないという大きな期待を抱かせる。きっと起きるなにかが。なにかはわからない、なにかが。それは現実味を帯びないまったく不思議な出来事かもしれないし、単に、胸に刻み込まれるような夏の思い出かもしれない。兎に角、なにかが待ち受けているような気がするのだ。

蝉の鳴き声が忙しなかった並木道を抜けきると、歩道はいくつかに分岐しており生徒の群れは散り散りになっていった。一気に人の通りが少なくなって、しばらく続く無言。だけどそれは居心地の悪いものではないのが不思議だ。会話がぷっつり途切れればなんとなく気まずくなったりするものだけど、アレンにとってリナリーは、リナリーにとってアレンはそうではなかった。

目の前で点滅しはじめた信号が赤に変わるのが見えて、横断歩道の手前で立ち止まると、リナリーがあっ、と声を上げた。

「ねえアレンくん、休みの間どこか一緒に遊びに行こうね」

リナリーは、とん、と一歩前に躍り出た。プリーツのミニスカートの裾をひらりと翻し、くるりと振り返ってアレンに笑みを向ける。

「もちろんですよ!・・・ってリナリーに先越されちゃいましたね、情けないかも」
「なあに、どういうこと?」
「・・・普通こういうのって、男の方から誘うものじゃないですか?」

あーあ、とアレンが落胆したように口を尖らせるとリナリーは別にどちらからでもいいじゃない、と笑った。

「だって、わたしから誘ってもアレンくんから誘っても、結局お互いに答えはイエスでしょう?」

リナリーは億尾も無くそう言った。まあ確かにその通りだけど。 頷こうとしたところで信号が青に変わる。車の通りは少ないから、急かされる必要もない。ふたりはゆっくりと歩き出した。

「僕、夏祭り行きたいんですけどどうですか?」

先程頷こうとした、肯定の意味も含めてひとつの提案をする。

「いいわね行きましょう、・・・ってアレンくん、屋台の食べ物が楽しみなんでしょ」

わざとらしく冷ややかな口調でリナリーが言った。次いで、「あれ、やっぱり解りましたか?」とおどけてみせたアレンに、俯いてくすくすと笑いを零す。暫しゆれる華奢な肩。彼女の控えめな小さな笑いは、とても魅力的だとアレンは思っていた。

「リナリーは何処か行きたいところないんですか?」

気を取り直すようにそう言うと、彼女は、え?と顔を上げた。

「私?・・・そうね、花火大会とか?観たい映画もあるし、買い物にだって行きたいし・・・なんだか数えたらキリがないくらいかも」
「あははっ、じゃあそれだけ沢山一緒に出掛けましょうよ?」

にこり、と。アレンは首をかしげて微笑んでみせた。視界に入るきょとんとした黒い瞳。が、それも一瞬で、直ぐに弾けるような笑顔を浮かべた。

「本当に?絶対約束なんだからね?」



ああ、きっとなにかがはじまる。しゃわしゃわと蝉の鳴き声に包まれながら思った。 溺れそうなほどの時間は余すことなど無いに違いない。自分達に掛けられた魔法はきっとその出口まで解けない。
そんな気がした。





はじまりの音      










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恋が始まる予感というやつですよ(・・・)(痛)。夏はね!そういう季節ですよ!久しぶりに文章書いたせいでいつもとなんか違う気が
えー、リクはアレリナでした。制服とか着てるといいってことで学パロにしてみました!制服があんまり表だってないんですが(すみません!)書いてて楽しかった。妄想が膨らみますね!気が向いたらまた書くかもしれません。先生とか色んな設定つけると楽しそう
兎にも角にもジャックさま、リクエストありがとうございました。こんなので宜しければどうぞ差し上げます!

2006,August 18



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