世界にいる人間が俺達ふたりだけだったら、俺はどれほど幸せなんだろうなあ。

















「ラビ?なにか言いましたか?」「んーん、アレンは可愛いなあっつったんさ」「・・・なんですか、それ」ほら、呆れかえったような表情。冗談だと思っていてくれているのならそれでもいい。気付かないでいてくれればいい。もとより気付かれる必要なんてない。むしろ気付かれてはいけない。「あ、そういえばラビ、しってますか?」「なにを」肩につきそうな程に伸びたアレンの髪を弄りながら尋ねた。相当伸びてるから、今度俺が切ってやろうか。やわらかいアレンの髪は触り心地がよく、両手でさらさらと掬い上げては落とす。掬い上げては落とす。「おめでたい話ですよ」「なにそれ」「ほら、来月、リナリーの誕生日ですって」ぴたり。手が止まる。「プレゼント、なにがいいですかね」「・・・さあ、なんでもいいんじゃねえの」「あれ、どうしたんですか?珍しくえらく冷たいですね」「・・・だって言われなくても知ってたし、仲間の誕生日くらい」「ああそっか、そうですよね。・・・でも僕、神田の誕生日は知りませんよ、まあそもそも知りたくもないんですけど、」ぱきり。なにかが罅割れる音がした。アレンはまだなにかユウのことを言っていたようだけど、俺はもうなにも言わなかった。ただひたすら、無心にアレンの髪の毛を弄ることに集中した。掬い上げては落とす。(だって聞きたくない、見たくないんだ、その薄い唇が他の人間の名前を紡ぐところなんて、)
ああ、本当に、
世界にいる人間が俺達ふたりだけだったら、俺はどれほど幸せなんだろうなあ。ふっ、と自嘲的に笑った。だってそれは途方のない夢であり望みであり一種の妄想だ。それなのに、ぎゅっ、と槌を強く握りしめた自分がいたのがひどく恐ろしかった。これは、この槌は。世界を護るためだけに存在する武器であるというのに、






  壊  衝 動







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ラビアレ。アブノはたまーに書くと楽しいですね。アレンは、それが歪んだものでも愛されていてほしい。・・・なんてね

2006,August 6



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