「何処に行っちゃったんだろ」
―――・・・・・・アレンくんってば。



今回任務に飛ばされた街は、とある国の首都だった。
それ故やはり人の多さは平常の比ではなく、まるで際限なく沸いて出てくる虫のようで気持ちが悪いほどだ。 そしてその波に飲まれたり、吐き出されたり、揉みくちゃにされているうちに、気付けばある種のお約束どおり 任務の為に共に来た彼とはぐれてしまい今に至るわけで。
真夏日なのに全身黒ずくめである意味目立つはずの団服姿なのに、思うように身動きがとれない人混みの中ではとうとうその姿を見つけ出せなかった。途方にくれて思わず、どうしよう、と小さく呟く。

(こんな街中じゃイノセンスを発動して捜すわけにもいかないし)

彼の特技のひとつに迷子になること、というのがある(とわたしは思っている)。 だけど今回ばかりは彼の方向音痴だけの所為には出来ないのだった。 だって、彼がしょっちゅう迷子になることを理由に二人で一緒に調査することに決めたのだ。のにも関わらずはぐれてしまったわけで、 人混みの中で彼の姿を見失ってしまった自分にも、その責任がある。
(アレンくん、あんまり遠くに行ってなきゃいいんだけど)(なんだか普通じゃ行かないところ―――路地裏かどこかにでも迷いこんじゃってそうだわ)

きょろきょろと、注意深く辺りを見回しながら再び歩き回って、やっとのことで大通りから少し外れたところに見慣れた白髪をみつけた。 その頭上をティムキャンピーがくるくると飛び回っているのが見えて、間違いないわ、と確信する。 ああ良かった、と安堵のため息をついたのも束の間。「アレンく、―――」と呼びかけた声を思わず飲み込んだのは。
きゃあきゃあと高い声を上げて、彼を囲うように3,4人の―――女の子?



「此処へは観光で来たんですかぁ?」
「いえ、任務・・・じゃないや、仕事で」
「なーんだ、観光で来たんだったら案内してあげようと思ったのに」
「はは、有難う御座います」
「それにしても、こんな人の多い街でお連れの方とはぐれてしまったなんて。捜すのも大変ですね」
「でもまあ、僕の不注意ではぐれてしまったんで仕方ないですよ」
「ねね、ひとりで捜すのは大変でしょ?御一緒しちゃいますよ!」



(あ…、)
ぐっ、と下唇をつよく噛み締めた。そうでもしていなければ、わたしはなにかとんでもない事を口にしてしまいそうな気がした。
思えば、似たようなことは今までにも幾度かあって。
彼と歩いていれば、じろじろと品定めされるかのように刺さる視線。時には、「素敵よね!」なんて黄色い声を上げているのが聞こえたりして。

確かに出会ったばかりは変わらなかった身長も、今ではこちらが見上げなければならないほどだ。 顔つきだって少年から青年のそれへと変わっていて。 可愛らしいと云われていた風貌に多少の精悍さが加わった、と形容できそうなのだけれどつまりまあ、端的に言えば秀麗なわけだった。 おまけに、元々彼が持ち合わせていた柔らかい物腰に穏やかな雰囲気は変わらないままだから、 とても品のよい英国紳士、ともいえるかもしれない。
だけどそんなことじゃなくて。
容姿なんかじゃなくてもっと、彼にはもっと素敵なところが沢山あるのにそれも知らずに ほんの上っ面だけを目にしただけで、彼女達が媚びたことを言っているのがどうしようもなくこの上なく許しがたかった。 けれど、そんな彼女達にアレンくんが隔てのない笑顔を向けていることが如何してか、それ以上に―――。
だけどそんなこと、とても言えない。言っちゃいけない。言えるような立場にいるわけじゃない。
解っているのに胸が締め付けられるように苦しくて、代わりにぎゅ、と団服の裾を握り締めた。唇はすでに噛み切れそうだ。
・・・こんなの、気持ち悪い。なんだかわたし、今すごくすごく嫌な子、だ。

(そんな目でアレンくんをみないで、)(ほかの女の子にそんな笑顔みせないで、よ)







澱みに沈めてよ














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芸能人じゃあるまいし、道端で囲まれるって・・・とか思っても言わないように!設定としてはリナリーとはぐれて途方に暮れてるアレンに、親切心(またの名を邪心ともいう)(・・・)で女の子たちが声を掛けたというかんじです。此処で説明すんなって感じですね! モテるアレンにリナリー嫉妬ってことでかなりおいしいリクでした有難う御座います。
よろしければ、リクされた方のみお好きにどうぞ!です!

2006,July 28






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