サンシャイン・
ホリデイ






「暑い!」 

「暑すぎる!」

「お前ら暑がりすぎなんだよー」 



殿は呆れたようにそう言ってるけど、いいやもうこの暑さは異常だ。椅子に大きくもたれかかってそこからもう動く気もしない。 隣にいる美咲も同様に完全にダウンしているようで机に突っ伏している。

今日は折角の夏休み、しかも初日だと言うのに何が悲しくて特力の教室にいるのかと言うと、特力率いる野田っちこと野田先生がどえらく長くタイムスリップしていたものだから、 その分の授業の遅れを取り戻すため、こうして補習が行われることになったのだった。(つまりは野田っちのせいだ!)
おまけにこのアリス学園は冷暖房完備!
のはずなのに運悪くこの部屋のクーラーは故障したらしく、 全開にしたドアや窓から時折入ってくる風でこの暑さを我慢しなければならなかった。落ちこぼれのこのクラスにはあんまり予算も回ってこないから修理も何時になるんだか、今夏の補習はこれで過ごさないといけなくなりそうで憂鬱極まりない。



「死ぬ・・・溶ける・・・」

「ホントだれすぎだって。チビ達を見てみろよ」



そう殿に言われて、このだらけた体制は勿論崩さぬままに、俺と美咲は横目でチラリと蜜柑を見た。いつもと変わらず、他の特力メンバー達と共にぎゃあぎゃあ騒いでいる。
しかしまあ確かにそいつらも暑そうではあって、カッターシャツが汗で肌に張り付いているのが分かったけど、それでも何故そんなにはしゃいでいられるのか到底理解出来ない。こんなときは大人しくしてるに限るっつの。大体、どうすれば暑さに耐えてはしゃげるのかなんて別に理解したくもないけど。



「なーんであいつらあんなに元気なんだよ」

「知るかよ、もう俺このままじゃ溶けますー」



ああもう本当に暑い。
今日の気温は間違いなく今夏の最高気温、いやもう今世紀の最高気温じゃないか?
じっとしているだけで体力が消耗されてる感じがする。何かもう蝉の鳴く声すらも鬱陶しい。
「黙れ蝉!」と叫ぶと「お前もな!」と美咲にどつかれたりした所為や、美咲と団扇を取り合いした所為もあるのだろうけど、無駄に体力を消耗したのには(しかも結局取られた)。

はあ、とついた大きな溜息をつく。その様子気が付いたのか、蜜柑が心配そうにこちらへと駆け寄ってきた。



「翼先輩に美咲先輩、どないしたんー」

「うーんちょっと暑さにダウン中・・・」

「・・・ほな水遊びしようや、みんなで!」

「おいおいチビ・・・今は一応補習中」

「もう終わるやん、みんなでしよ!」



可愛い後輩のご希望とあらば自分達に拒否権はなく、 (むしろ俺と美咲以外の奴らは全員乗り気だった)特力メンバー総出で水遊びをする羽目になり、全員連れ立ってぞろぞろと教室を出て行く。俺は最後まで外に出るのを渋ったけど(動きたくないもう)、3人がかりで無理矢理引っ張り出された。
しかし炎天下、ジリジリと照りつける太陽の日差しは、 教室の蒸し暑さよりも耐えがたかった。空を見上げて、燦々とぎらついている太陽に向かって舌打ちをする。



「ったくこんなところに居たら蒸発するー頭おかしくなるー・・・ふざけんなよ太陽」

「つばさー」



ひとりでぼやいているところに突然名前を呼ばれて、何だと振り返ると、ビシャッと言う音と共に感じた冷たい感覚に思わず目を瞑る。

おそるおそる目を開けると、ホースを右手に持ってニヤニヤ笑った美咲と、

現在進行形で水をかけられてビショビショに濡れている自分がいた。



「おいっ、お前やる気なかったんじゃねーのかよ」

「んー気分が変わった」

「ホント気まぐれだなー」

「ほっとけ」



美咲が軽く笑った隙にすばやくホースをその手から奪いとった。先程彼女がしたように,ホースを彼女に向けて勢いよく蛇口をひねる。



「翼それ反則!」



喚いている美咲を尻目に、さっきの仕返しと言わんばかりに思いきりホースを向ける。きらきらと舞う水滴。
「もう勘弁!」と叫んでいる声が聞こえて、 してやったりな表情を浮かべつつもさっきとは逆の方向に蛇口をひねった。



「お前やりすぎ!全身びしょびしょだっつーの!」



怒り口調とは裏腹に、その表情は楽しそうだった。
彼女が掻き揚げた濡れた髪は、太陽の光に当たってキラキラと光って、眩しい。びしょ濡れになったカッターシャツが、 普段は見えない彼女の身体のラインを露にしていて、思わず凝視してしまった。

ヤバイヤバイヤバイ。何がヤバイって,美咲のその姿もだけど何よりもそれによって俺自身がヤバイ。

そんな俺の葛藤など知る由もなく、美咲は平然と顔を覗き込んできた。



「翼ーどうした?」

「あーなんでも無い!なんでも無いからちょっとあっち行けお前っ」

「はあ!?」

「いいから!」



熱い、熱い、暑い。そうだ、こんな変な気持ちになったのも、どれもこれもみんなこの真夏の、暑さの所為だ。まじでふざけんなよ太陽!







「おーおー、あそこ2人だけ青春ですなあ、お兄さん羨ましいよ、なあメガネ?」

「あー殿の青春は終わったもんねー」

「やっかましいわ!」









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ちょっと頑張ってみました。割りと長めです。 ちょっと翼がHENTAI(いやいや)な感じですけど オチがこんなのですみません。

そもそもアリス学園夏休みあるのかわかんないですね!まあその辺り適当で!

2005,August 1









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