快晴の法則***






「・・・理科・・・じ、18点・・・」

目の前に広げた紙切れ、もとい悲惨すぎる期末試験の結果に、蜜柑は思わず答案用紙を握る手に力をこめた。
彼女の字で連ねられた記号は、埋めた解答欄の割に丸をもらった数があまりにも少ない。もはや笑うしかなく、ひきつった笑みを浮かべながら答案とにらめっこしてみる。
しかしそんなことをしてみても18点が81点になるわけもなく、ついにへなへなと力無く机に伏せた。

テスト返しなんて憂鬱極まり無いものだ。

「今回は理科あんまり勉強出来へんかったしな」

なんて、自己弁護のつもりで呟いてみたところで、余計にむなしくもなる。

「これは30点・・・これも26点・・・もうあかん・・・」

こんなただの紙切れにここまで一喜一憂させられるのはおかしな話かもしれないのだが、 しかしその結果が学園生活での待遇をそれなりに左右するわけで。
先ほど、蛍や委員長の答案用紙をこっそり覗き見てみたのだが、 予想はしていたものの自分とはおよそ比べものにならない出来の良さで更に肩を落とす羽目になった。
(てゆーか100点とかありえへん!間違いなしってことやろ!)

「唯一マシなんは国語だけや、あとは全滅…」

(こんなんやったらまた、優等生賞なんか無理や・・・)
机に突っ伏したままはあ、と大きく溜息をつく。
と同時に、はっ、と聞き覚えのあるせせら笑いが耳に届いた。

「ブスでウザくておまけに頭も悪い、三拍子揃ってんじゃねーか」

横から皮肉って来たのは、この間の席替えで運悪くも隣の席になった棗だ。 馬鹿にしたような口調の割に寧ろ呆れ顔でこちらを見ていて、それが何とも腹立たしい。

「ちょっ、勝手に人のテスト見やんとってよ」
「テメーが自分でぶつぶつ点数言ってたんじゃねえか誰も聞きやしねえのに」
「・・・そうやっけ?」
「自分の喋ってたことも覚えてねーのか?救いようのねー馬鹿だな本当に」
「う、うっさいなあ!どーせ馬鹿ですよーだ!」

蛍にも棗にも、というかクラス中に散々頭が悪い、馬鹿だと連呼されている上に今回のこのテスト結果。悔しいながらも自分は勉強が苦手だと素直に認めざるを得なかった。
全く嫌になる。かねてからの目標である優等生賞なんて、いつまでたっても手に届きそうにもない。自分なりに努力していたって、評価してもらえるのは結果だけだ。
・・・だいすきな祖父に会えるのは一体いつになるのだろうか。
勢いでこの学園に飛び込んだものの、それだけはいつも心の何処かで気がかりだった。 勿論、自分はこの学園での生活が大好きで、祖父にも手紙は書いている。しかし便箋に言葉を綴るのと、面と向かって言葉を交わすのではどうしても違うのだ。
だから、会いたい。

すっかり肩を落としている蜜柑に、見かねたのか棗は大きく溜息をついた。

「・・・ったく」
「・・・何なんよ」
「そんな風に辛気臭い面しててテメーのじじいが喜ぶとは思えねーけどな」
「・・・何よ、アンタがさっき散々ウチのこと馬鹿って、」

「お前が落ち込むなんて似合わねーんだよ。どうせ馬鹿なんだから馬鹿面して笑っとけ」

「ばっ、馬鹿面て―――」

いつもの如く言い返してやろうとして口篭る。
(・・・あれ?”落ち込むなんて似合わんから笑っとけ?”・・・もしかして棗、ウチに気使ってくれてる?)
そうだと思った。心の中がどうしようもない曇り空のとき、棗はさっと光を差し込んでくれた。確かに、いつも分かりづらくて遠まわしだけれど。
不意に流架の言葉がよみがえった。
”「棗は優しいよ」”





「なに見てんだよ」

棗の言葉ではっと我にかえった。知らない間にじっと彼に重ねていた視線を慌てて逸らす。

「べ、別に!ただ・・・」
「なんだよ」
「ただ・・・。・・・やっぱなんでもあらへん!」
「はあ?言えよボケ」
「絶対言わへん」

いつものように言い争いが始まって、クラスメイト達が呆れ顔でこちらを見ている。言葉の応酬を繰り返しながら、心の中で呟いた。なんとなく気恥ずかしくて、面と向かっては言えないから。
(ありがとうな、棗)





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理科のテスト18点?とんでもないアホですね!(涙目)←

2006,March 19








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