「かなめを・・・、かなめを利用したあいつらを許せねえんだ」 わかってる、確かに大切な仲間を利用した奴らは許せないよ、あたしだって。だけどこの学園を相手に勝算なんてまず無いよ。ロクでもないあの教師たちに何をされるかしれない。お願い、あんたまで酷い目に遭う必要はどこにもない、どこにもないのに。どうして。 (行かないでよ)(つばさのばか) |
「わりー、美咲」
扉を開けるとそう言ってひょっこり現れた、丸一日ぶりに見る翼の姿は、目を疑うほどによろよろで傷だらけで。至るところにつくった傷は、明らかに人的なものだと直ぐに感づいた。だとするのなら、こんなになるまで一体誰が。それらは、見るに耐えないほどあまりに痛々しい。 右目の下には、見慣れない印が深く刻まれていた。この刻印が、噂に聞く罰則印なのだろうか。・・・。あたしはしばらく言葉を失った。 けれどそんな目に遭ったというのに、当の翼はいつもとさして変わらない様子だった。 変わらない様子を演じているようだった。 そんなふざけた演技、他の奴は騙せてもあたしにだけは通用するはずないのに。そんなことくらい解ってんでしょ、馬鹿。なんで「大丈夫だから」なんて平気なふりすんの。 耳をひっつかんでそんな文句のひとつでも叫んでやりたいのに、声は上手く言葉にならなかった。 「全部ぼろぼろじゃんか、ボケ」 詰まるような声でようやく言えたのはそれだけ。そのまま翼の手をとってへたり込んだ。あたしの手に引かれて翼もその場に座り込む。 「お前もぼろぼろだろ美咲」 「なにがだよ」 気付いてねーのかよ、と苦笑する翼によると、どうやらあたしの方はぼろぼろに泣いているらしかった。 ああ、道理で声が震えると思った。目と喉の奥が熱いのもそのせいか。 「あーもう、お前が泣くと困るんだけど」 「だって、おまえがそんななんてことない顔してんのがものすごい腹立つんだよ」 「・・・なんだよそれ」 「なんだよ、ってねえ!だって何処が大丈夫なんだよそれの!大体あたしがどんだけ心配したと思ってるわけ?昨日なんて夜眠れなかったんだよ一睡も!」 怒りを込めて捲くし立てると、涙のせいで至るところに不安定な抑揚がついた。怒りを感じるどころか情けなさの混じった声。本当はもっともっと言ってやりたいことは山ほどあるけど、また勝手に溢れてきた涙のお陰で上手く伝えられそうにない。 「俺が大丈夫っつってんだから大丈夫なの!・・・つーかお前には心配掛けたくなかったのに、もー」 あたしの剣幕に負けじと翼も声を上げた。しかしそれも最後のほうは弱々しく、最後には吐き出すような溜息をつかれた。 かと思うと伸びてきた翼の手。その手は、制服の袖で乱暴に、あたしの涙を拭った。 心配掛けたくなかったって、あんなの心配して当然のことじゃん、馬鹿。 ごしごしと痛いくらいに目元を擦られながら、ふと、目先で揺れているその白いカッターシャツの袖に赤い血が点々とこびり付いているのに気が付いた。思わずそこに手を伸ばす。 「どうしたんだよ?」 「・・・なあ翼、痛かった、よな」 「いや、もう痛くねーよ」 「でもまだちょっと血出てる」 「全然平気」 「・・・あ、ちょっと待って、そういえば救急箱あるよ」 「いい、いいって」 「なんで、放ってたら治り遅くなるじゃんか」 「大丈夫だから」 「・・・でもせめて消毒くらいしたほうがいいだろ、」 そう言って立ち上がろうと重い腰を上げかけたとき、急に強い力で腕を引かれた。バランスを崩してよろけているところをさらに引っ張られて、なだれ込むように翼の腕の中に転がり込んだ。 「な、に」 「・・・ほんとに傷とかそんなのは痛くねーんだ、大丈夫なんだ。だから・・・ごめん、此処に、傍にいてくれねえ?」 その声が少しだけ震えていたような気がしたのはあたしの気のせいだろうか。 そっと頭を撫でると、回された腕の力がぎゅう、と強くなった。苦しいくらいに。 やっぱり大丈夫じゃないじゃん、強がっちゃってさ。あたしには、全部解ってんだからね。 「ばかつばさ」 ******************************* なんだかやっぱりこのふたりが、わたしの創作意欲の原点なんだなーなんて思いました。 ところでついに過去捏造やっちゃっいましたが捏造できてんのかなあこれ。 そもそもこんなのリクでやるか?という感じですけども・・・やっぱり駄目でしょうか?(苦笑) 神無月さま、こんな作品でよろしければ捧げます。お気に召さなければ書き直しますのでので 2006,August 2 |
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