秋風***





朝の澄んだ空気をゆっくりと吸い込みながら並木道を歩く。 こんなのは久しぶりだ、いつもの朝は遅刻との激しい戦いで(結局いつもギリギリのところで惜敗するんだけど)慌ただしいからこんなに落ち着いて登校するなんてめったと無いことなのだ。
珍しく早起きしたあたしが、いつもより小一時間程早く無理矢理叩き起こしたせいか、 隣には翼が眠たそうに大きな欠伸をしていてまだ目は虚ろだ。どうなんだろう、もう一発くらい頭を叩いてやった方がいいのかな。

そんなことをぼんやりと考えていると、突然体に受けた風が何時もよりも肌寒く感じて小さく身震いした、ああもう夏も終わりか少し名残惜しいけれど。 爽やかな青緑色の葉を揺らしていた木々が徐々に色鮮やかに染まってゆく。 赤や黄、そして所々にまだ夏の名残を残す青緑。夏から秋へと移りゆく季節を美しく彩る、それは自然の。
こういうのを風情があるとか趣があると言うのかな、まあ難しい言葉はよく分からないけど取り敢えずは、



「綺麗だよなー」



風の音に紛れて小さくぽつりと呟いた。



「んあ?」



< 先程までのあたしの大いなる自然界に対する感動を完全にブチ壊すかのように、 寝ぼけ眼を擦りながら間の抜けた声をこちらに向けてきた翼はどうやらあたし直々のローキックを食らいたいようだった。 リクエストにお答えして普段より三割増しの強さで蹴りを入れると声にならない悲鳴を上げて、 翼はがくりと地面にひざまづいた。



< 「目は覚めましたかー?」



蹴りを入れた部分を痛々しげにさすりながら翼はコクコクと首を縦に振った。

ええもう完全に!安藤翼完全起動です!

と妙にしゃきっと背筋を伸ばし手を挙げて訳の分からないことを言ったかと思うと、翼は途端だらりとそれを緩めた。



「あーあ折角良い夢見てたのによー」



美咲の所為だー、いい所だったのに!と小石を蹴飛ばしながら呟く翼の姿がなんだか可笑しくて、無意識のうちに笑みが零れた。
なんだコイツ歩きながら寝てたのかよ、おまけに夢まで見てたわけ? 本当残念そうにしてるけど一体どんな夢だったんだよ全く、なんて。



「何笑ってんだよ美咲」

「笑ってねーよ」



ほら早く歩けって、と不服そうな顔をしている翼の手を引っ張る。掴んでいただけのそれは、何時の間にかお互い重ね合わせていた。



「きゃあ何これ、秋の並木道を手繋いで歩くなんてお洒落なカップルみたいだわね美咲ちゃーん」
「何言ってんだよ何処のオカマだよ気色悪いなテメー」
「うっわひでー事言うなお前」



あーあ、こんなの中等部の奴らに見られたらネタにされるに違いない、ましてやそれが特力の奴らだったりしたら大変だ。
それでもその手を離す気にもならなくて、示し合わす訳でも無い、どちらからとも無くさっきよりも一層固く手を繋いだ。

秋風が一瞬掠めて、あたしと翼の髪と制服の裾を揺らしていった。






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翼美咲久しぶりですかね!いやあやっぱりこのふたり好き
でも久しぶりに書くとキャラがつかめません!すみませ・・・!

2005,September 19




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