「資料室って此処やろか?」

「知るか」

「絶対そうやって、札に書いてんもん」

やっっっと見つけた、道程は長かった!と、隣でふてぶてしい顔をしている棗のことはさておき、蜜柑は歓喜の声を上げた。
地理の授業中、この資料室まで世界地図を取って来てくるように頼まれて今に至っているのだが、 それが随分前に感じられるぐらいに廊下を立ち往生して、ようやくのことだった。 この広い学園内には知らない場所も多々あって、蜜柑にとって資料室とかいうのもそれに当てはまった。



「ほな、さっさと地図取ってさっさと戻ろ。授業終わってまいそうやし」



それに棗、えらい機嫌悪いしな、と言うのは心の中だけに留めておく。
彼の機嫌が悪いのはいつものことだが、普段の三倍、不機嫌オーラを漂わせているのは多分というか絶対、迷いに迷って歩き回った所為に違いない。全く短気なんだから。
と、そんな事を思いながら引き戸に手をかけた。
近代的な設備が整ったアリス学園にはおよそ似つかわしくない、古びた木製の扉だ。 古びた、と言えば聞こえはいいかもしれないのだが、日常語でいえば、ぼろい、の一言だった。 粗雑に扱えばドアごと壊しかねない気がして、そっと引いてみたにも関わらず、扉からはミシミシと嫌な音が立った。
この木の扉腐ってんとちゃう、と思わず眉間に皴を寄せる。
半分くらい扉を開いたところで、ぱらぱらと木屑が落ちてきて、冗談抜きにこれ、ホンマに壊れへんやろか、とためらっていると、 後方から、早くしろ、と急かす声が飛んできた。



「わーかってるわ、うっさいなあ棗は」



扉に向かって浮かべていた眉間の縦皴は、後ろに仁王立ちしている人物へと向けられた。
ホンマのホンマに短気やなこいつは、と小さく呟くと、不運にも当人に聞こえていたのか、背後から勢い良く入った蹴り。 よろけた自分の身体が、上手い具合に資料室の中へと転がり込む。



「何すんねん!」

「とっとと地図捜して来い」

「アンタは一緒に捜してくれへんの?」

「当然」

「あっそう。わかりましたよ、ほんなら地図はウチが捜してきますから棗はどうぞ気楽にしとってください」



皮肉めいた口調でそう言って奥へと入っていく。部屋の中はいやに埃っぽく、二、三度小さく咳き込んだ。



「地図って、あれかな」



所狭しと並べられた機材や器具の中で、それらしきものに適当に目星をつけると、精一杯背伸びして、戸棚の上に手を伸ばす。
筒を開けてみると、思った通り。
ウチって勘鋭いんかも、と、にやけながら、どれだけ放置されていたのか、厚く積もっていた埃を掃った。 広げてみると、1メートルと少しほどの大きさだった。黒板に貼り付けるのだろうから、このくらいで丁度いいのだろうけど、それにしても大きく感じた。



「なんか…この地図で見たら、アリス学園なんかゴマの大きさ以下やな」



これだけ広い敷地があって、未だに迷子になるくらいの学園なのに、この地図で眺めればその大きさは点にも満たない。 こんなに広い世界の中で、自分はこの点にも満たない土地の中でしか生きることを許されていないのだ。
そう考えると、何故か酷く哀しくなった。自分達の世界は、あまりに狭すぎる。
見る事の出来るものも、触れることが出来るものも、ほんの僅か、限られたものしかない。 ふと、出逢った頃の棗が、学園を脱走しようとしていたのを思い出した。
脱走を夢見る生徒達は、今もやはり少なからずいる。抑圧されたこの狭い狭い世界は、どうしようもなく息苦しいのかもしれない。



「何ぐずぐずしてんだボケ」

「うあ、棗!」



扉を勢いよく開く音と共に飛んできた罵声。
あんなに乱暴に開けたらあのドア壊れてまうのに、と冷や冷やしながらも、 それ以上に、彼の機嫌をこれより損ねては痛い目に遭うに違いなく、慌てて、広げた大きな世界地図を丸めた。






学園アリス/棗×蜜柑









「さあみんな、どうぞ召し上がって!」

「こんなの・・・召し上がって、って言われてもなあ、ガイ」

「ルーク!声が大きいぞ」

「うっ、でもなんか・・・生臭くない?見た目も青なんだか紫なんだか、ちょーっとグロテスクだし。っていうか何これ飛び出てるの、骨?尻尾?」

「ふむ、青系統の色と言うのはこんなにも食欲を抑えるのですねえ。これはある意味料理の新境地と言ったところでしょうか」

「アニス、ジェイドも!声!」

「あの、えっと、ナタリア?これは・・・一体?」

「あらティア。ご覧になって解りません?ケーキですわよ」

「けーきぃ?ねえナタリア、これ何入れたのぉ?」

「別に普通ですわよ。そういえば、魚を沢山入れましたかしら。あとはクリームに豆腐や味噌、チーズなんかを混ぜて・・・フルーツもちゃんと入れましたわ」

「ふ、ふうん、そうなの」

「つーかクリームに豆腐と味噌とチーズなんて、人間が食べるものじゃ・・・」

「しっ、だから静かにしろって。殺されたいのかルーク」

「でも、これを口にしても死、」

「何かおっしゃいまして?」

「いやっ、美味しそうなケーキだなーって!なっガイ」

「あ、ああ!」

「ふふ、そうでしょう?ちょっと待ってらして、今向こうで紅茶を入れてきますわ」





「うわー、どうするんだよこんなの!」

「そうね・・・ナタリアには悪いけれど、これはちょっと食べられそうに無いわ」

「だよなー・・・ってジェイド?何処行くんだよ」

「ちょっと熱っぽいんですよ。朝から体調が悪いとは思っていたんですが、どうやら風邪をひいたようです。ああ、この調子じゃケーキなんて食べられそうにありませんゴホッゲホッ」

「いやいや、ジェイドの旦那?」

「大丈夫ですか!?大変、大佐が苦しそう!私、付き添いますね!さっ行きましょ大佐。みんな、先にそのケーキ食べておいてくれていいからね!」

「アニス・・・すみません、ゴホッ」

「ちょっ、ちょっと待って二人とも!」





「なあ、四人でこのケーキを切り分けると、一人あたりの量って結構すごくないか」

「そうね、やっぱりナタリアにちゃんと言うしかないわ。・・・あら、ルークどうしたの?」

「うーん、そういえば俺も、頭が痛い気がするんだ・・・ジェイドの風邪がうつったのかな。ティア、向こうでちょっと診てくれねーか?」

「・・・え?ええ」

「お、おい!ルーク?」





「あら、皆どうなさいましたの?」

「えーっと、うん、あのー」

「仕方ないですわね、直ぐ戻ってくるでしょう?それならお先にどうぞ、ガイ」

「ハハ・・・ありがとう(どうしろって言うんだよ!)」






テイルズオブジアビス/パーティキャラ









ねえ、ロイドのこと好きでいるの、やめられたらどれだけ楽なのかな。
ロイドが、しいなや先生、プレセアと笑い会ってるだけでぎゅっと胸が締め付けられるみたいに苦しくなる。 心の何処かで、ロイドを取られちゃうような気がして、それを怖がってる自分がいて。
しいなのことも先生のこともプレセアのことも、ホントにホントに大好きなのに。
ねえ、こんな汚い気持ちはもう沢山なのに。ありもしない疎外感とか、羨望とか、嫉妬とか、心の中はそんなのばっかりで溢れかえってる。
・・・嫌だよ。
わたしはこんな醜い気持ちばっかり積み上げていくんだよ。 わたしにとってはロイドはもうずっと特別で、でもロイドはきっとそうじゃないのに。なのに、なんで、
なんで なんで なんで



ロイドじゃないと駄目なんだろう。






テイルズオブシンフォニア/コレット→ロイド








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